釜煎り茶について
熊野地方に伝わる“特別な番茶”
一般的に流通しているお茶は「蒸し製」で作られる緑茶。対して、「釜で炒る」お茶は珍しく、さらに天日干し釜炒り茶となると、全国的にも数多くありません。このお茶は地元では「番茶」と呼ばれて昔から親しまれてきましたが、一般的な摘み残りで作る番茶とは違い、ここでは一番茶で作られる釜炒り茶をそう呼んでいます。
本宮では家庭で茶木を植え、家で焙じる文化がありました。少し大きめの茶葉も山間に伝わる素朴なお茶ならでは。家庭でもできる天日干しは原始的な製法ながら、茶粥文化のある地域だからこそ受け継がれてきたものなのかもしれません。
釜煎り茶の製法
なっ茶の釜煎り茶は、熊野地方で昔から継がれてきた独自の製法を守っています。
新芽のみを収穫
畑の両サイドから機械を持ち、茶木の表面を刈っていきます。収穫するのは新芽のみ。刈った茶葉は味に変化のでないようグラム数を量ります。
収穫したての茶葉を即釜へ
収穫したての新芽を釜炒りします。量はもちろん、時間も毎回同じにしなければ味にムラが出るため、収穫と同時進行で炒り時間にも気を配ることが重要。
釜から出して
一定時間が経つと、釜から茶葉を取り出して、順次次の茶葉を炒っていきます。作業の日はスピード勝負。どの工程も放置する時間はひとときもありません。
揉捻作業へ
炒った茶葉を専用の揉捻機にかけ、ぐるぐると回転する重石によって揉捻します。釜もこの揉捻機も昔ながらの機械なため、壊れると替えがききません。
天日で干す
揉んだ茶葉はすぐにムシロに並べて干していきます。平らにならすのではなくまばらに小山を作るのがポイント。風の対流を作ることで乾燥を促します。
釜炒り茶の完成
二度の焙煎と揉み作業、二度の天日干しを経て最後の追い焙じ。茶葉の状態を確かめながら火入れを見届けたあと、心を込めて手作業で梱包しています。